密閉縦型発酵装置の謎!

14.07.15

有機質肥料と化学肥料の違い

吉田 達宏

 

1.はじめに

 

農薬や化学肥料に頼らずに作られた農産物に興味がある方も多いのではないだろうか?
これらを称する「有機野菜」や「有機農業」という用語は、ここ数年世の中に浸透してきており、確固たる地位を築きつつある。
そこで、今回のコラムでは、近年にわかに脚光を浴びている「有機質肥料」と、現在もなお多くの農家で使用されている「化学肥料」との違いについて紹介する。

 

2.肥料について

 

「肥料」は「肥料取締法(1950年制定)」によって、保証されるべき品質が定められている。
肥料取締法によると、肥料は図1に示すように、「普通肥料」と「特殊肥料」に分類され、一般的に有機質肥料と化学肥料は「普通肥料」として扱われる。

 

3.「有機質肥料」とは

 

一般的には、動植物由来の肥料を「有機質肥料」と称する。詳しくは、肥料取締法の普通肥料に規定される公定規格を満たしたもので、具体的には、原料が、魚粕粉末、肉骨粉、なたね油粕、豆腐かす乾燥品、加工かきんふん(鶏ふんを発酵乾燥させたもの)などといったものである。
有機質肥料の効果や特徴※1)としては、
①施用後、土壌中の微生物によって、有機態から無機態へ分解されることで、はじめて肥効が現れるため「緩効性」である。
②土壌の物理性の改善や、土壌中の微生物の活性効果がある(図2)。

4.「化学肥料」とは

 

化石資源や鉱石、または化学合成品などを原料として化学的に加工して作られる肥料であり、肥料取締法では「普通肥料」に位置づけられる。商品群には、窒素質肥料や苦土肥料などの1成分のみのもの(単肥)や、窒素、リン酸、カリのうち2成分以上含んだもの(複合肥料)などがある。ただし、原料の鉱石や化石資源、あるいは化学肥料そのものを、日本ではほぼ100%輸入に頼っているため、近年の世界的な人口増加による食糧増産、諸外国のバイオ燃料増産による肥料需要の増加の余勢をダイレクトに受け、肥料価格は高騰している(表1)※2)。

 

化学肥料の効果や特徴としては、
①工業生産品なので肥料成分が安定している。
②肥料成分の含量が高いため、施用量が少なくてすみ作業的に楽である。

③製造方法を変えることで、「速効性」、「遅効性」、「対象作物に合わせた肥料」など、多様なニーズに対応している。
④連続施肥では土壌中の有機物が不足となり、土壌中の微生物の活性が弱まるので、土壌が痩せていく傾向となる。また肥料成分が地下水や河川に流亡し、水質汚染が懸念される。

 

5.おわりに

 

2012年に肥料取締法の改正があり、普通肥料登録において、配合割合の制限はあるが、特殊肥料である堆肥と普通肥料とを配合することができる「混合堆肥複合肥料」という区分が新たに設けられた。この肥料は、肥料成分が保証され、基本的に速効性である「普通肥料」の特徴と、土壌の物理性、生物性の改善効果のある有機分を多く含む「堆肥」の特徴を合わせ持つ、画期的な肥料となると考えられえる。また、安価である「堆肥」を配合することで、販売価格も従来の普通肥料よりも低くなることも考えられる。今後、この新しい複合肥料群が農業市場においてどのような展開となるのかを注目していきたい。

 

◆トピックス◆ 鶏ふんにおける「堆肥」と「肥料」のちがい

 

市販されている特殊肥料の鶏ふん“堆肥”と、普通肥料の加工かきんふん肥料(鶏ふん“肥料”)の違いを示す(表2)。鶏ふんに限って言えば、窒素成分の差が、特殊肥料と普通肥料の区分け、つまり“堆肥”と“肥料”の区分けになっているのではないだろうか。

当社の密閉縦型発酵装置は、開放式の堆肥化装置や堆積式の堆肥舎と比較すると、短時間での発酵・乾燥を特徴とするので、当社装置を用いて鶏ふんを発酵させると、アンモニアの揮散を抑え、高窒素の鶏ふん堆肥(鶏ふん“肥料”といってもよい)が製造できる。

◆参考文献
※1)日本土壌協会編(2014)「土壌診断と作物生育改善」日本土壌協会
※2)農林水産省 大臣官房統計部 農林水産統計レポートより作成